人生どうでも飯田橋

日々感じたことを綴ります

新しい手帳を買った話と、行きつけだった定食屋の話

昨日、手帳を買いに行った。

 

よくわからないけど、バーチカルとかいうのがいいらしい。

3,000円くらいのそこそこ値がはるものを買った。

 

恥ずかしながら、いままで仕事で手帳を使う機会があまりなかった。

新卒で入った会社は内勤だったので、卓上カレンダーで事足りた。

7ヶ月で辞めた2社目は自分がやるべきことを詳細に文章に起こして把握しなければ理解できなかったので、卓上カレンダーとメモ帳を併用していた。

ちなみに当時の上司(以下激詰めさんと呼ぶ)によると、健常な人は概要だけTODOリストに記しておけばやるべきことを把握できるらしい。

 

毎朝の詰め会で激詰めさんから、私のその日の仕事に対する指示をいただく。

私はそれをひと言も聞き漏らすまいとメモをとり、「なぜそこまで書かないと理解できないのか」と詰められるのが毎朝の日課だった。

金正恩の横で必死にメモを取る高官たちを想像してもらえばわかりやすいだろう。

 

だから、正直手帳にはあまりいい思い出がない。

就活していた大学生のときのほうが、活用できていたように思う。

たかが手帳ごときに、どうも身構えてしまう。

 

 

今日はもうひとつ、前の会社に勤務していたときによく行った、定食屋の話をしたいと思う。

 

入社して3ヶ月もするころには、毎朝激しい嘔吐に襲われ、朝食などとれる状態ではなかった。

昼食はゼリー飲料かカロリーメイト

それでも空腹感を感じることはほとんどなかった。

 

しかし不思議なもので、仕事が終わると急に食欲が湧いてくる。

無能でも腹は減るのだ。

 

その定食屋を見つけたのは、日曜の夜に回転寿司かラーメンを食べに行った帰りだったと思う。

そのときは「雰囲気のいい飯屋だな」と思い、そのまま帰宅した。

 

そして数日後の水曜の夜、ふと思い立ってその定食屋へ行ってみた。

看板に電気が灯っていた。営業しているようだ。

こういう個人営業のお店はえてして入りづらいものだが、そのときの私はなんのためらいもなく引き戸に手をかけた。

 

しまった、高そうだ…。

 

店内は座敷が数卓とカウンターが6席くらい。

客は一人もおらず、閑散としている。

私がカウンターに掛けると、のれんの奥から60代半ばくらいのご主人が「いらっしゃいませ」と顔を覗かせた。

 

f:id:onsen56:20170813141053j:image

 

お品書きを見ると高いものもあるが、1,000円前後の定食もあった。

私はロースカツ定食を選んだ。

ご主人が石油ストーブを運んできて、つけてくれた。

 

数分後、注文の品が出てきた。

ご主人は「ごはんおかわりしたかったら言ってね」と言い、厨房へ戻っていった。

 

f:id:onsen56:20170813141714j:image

 

誇張ではなく、ごはんは涙が出るほどうまかった。

朝から固形物を食べていなかった体に、吸収されていく。

気づくと私は「うまいうまい」と言いながら、涙を流して食べていた。

 

翌日もこの店を訪れた。

 

今度はカキフライ定食を頼んだ。

 

f:id:onsen56:20170813142309j:image

 

ご主人も暇だったのか、私の話に乗ってくれた。

彼は温泉が好きで、どこそこはきれいだとか、どこそこはなにがおいしいだとかの話で盛り上がった。

私は彼の故郷の沼田の話が好きだった。

 

私も鉄オタの地理オタなので、彼と話すのが楽しかった。

悪意と攻撃性のない人と話したのは久しぶりだった。

「お客さん、若いのに詳しいね。たいしたもんだなぁ」と言われ、会社では一挙手一投足を否定され続けていたため、とても面映ゆかった。

 

それから私はこの定食屋に足繁く通い、ご主人と温泉談義や行ってみたい場所について話した。

ここを見つけていなければ、私はもっと早くつぶれていただろう。

 

メインのおかずがなくても、味噌汁と煮物だけでごはんがいける。

私は赤だし派だが、ここの白味噌の味噌汁はいままで飲んだ中でいちばんだった。

ご主人もメインのおかず以外はおかわりをさせてくれるようになった。

 

私たちは住所を交換して「絵葉書でも出します」と言ったが、結局まだ出さないままだ。

書いているうちに、残暑見舞いでも出してみようかという気になった。

 

あとにも先にも、あんなにうまいロースカツ定食に出会うことはないだろう。